子育てというのは親の犠牲の上に
成り立っていくものです。
出産自体、母親の命を削っているんです。
出血もするし、傷もできる。
中には亡くなるお母さんだっています。
赤ちゃんって、母親の命を犠牲にして
生まれてくるんですね。
それから一年半も二年も
お乳を出すことも
お母さんの命を削っています。
体重はどんどん減っていきますし、
夜中に授乳するのも大変です。
でも、そうやって
自分の時間を犠牲にしないと
子育てはできません。
それが子どもに伝わるから、
いい子に育ってくれる。
ところが最近は、子どものために
自分の時間を犠牲にしたくないと
いう若い親が増えています。
子どものために我慢したくないんですね。
夜遅く
子どもを連れ回している親を見かけますが、
昔はそんなことはなかったと思います。
九時にはちゃんと
子どもを寝かしつけていたんですよ。
子どもと一緒に少し寝てからまた起きて、
夜中に掃除したり洗濯したりする
お母さんもいました。
いまはそういうお母さんが減っていますね。
若いお母さん方は、「我慢しなくていいよ」、
「頑張らなくていいよ」、と
育てられてきたのでしょう。
その人が親になったからといって、
急に「子どものために我慢しなくちゃ」
「頑張らなくちゃ」とはなりにくいです。
自分が甘やかされて大きくなってきたので、
子育てのために自分を犠牲にしようとは
なかなか思わないのです。
「可愛がる」と「甘やかす」の違いは
分かりにくいですよね。
私が母親学級でお母さんたちに言うのは、
「してやりすぎると、
すべてしてもらうことが
当たり前の子どもが育っていきますよ」と
いうことなんです。
してやることだけが親の務めではない。
大人になったら我慢することや
頑張らなければならないことが
たくさんありますから。
できないことを一つずつ
できるようにしてあげて、
親元から離れた時に
一人でも頑張って生きていける
子どもを育てるのが親の仕事なんですよ。
一から十まで全部してやっておいて、
そのまま放り出されたら子どもは悲劇です。
自分のことが
何もできない大人になってしまう。
それは間違った子育ての結果ですね。
手をかけることと、
甘やかしてしまうことの違いは
そこにあると私は思います。
内田美智子(助産師)
「大人の幸福論」より