★闇の中のポチ★
- 公開日
- 2015/02/06
- 更新日
- 2015/02/06
感動するいい話
薬の副作用で絶えず襲われる虚脱感で半日以上眠り続ける生活でしたので仕事どころではなく無職状態。
一時期は快方に向かい就職したのですが、就職先が小さな個人経営の会社ということもあり一日中社長と二人切りで、次第にセクハラ紛いの言動が増えてきた社長に耐えられなくなり辞職。
病名が判明するまで幾つも転院しましたが、仮病扱いする医者や精神病院への通院を勧める医者に何人も遭遇して、本当に精神的に参ってしまいそうでした。
その時期に祖父母の家で牛舎の番犬として飼っていたスピッツ系雑種のポチ♂を譲り受けました。
鎖に繋がれた状態でブラッシングなども施されていなかったポチはボサボサの毛玉だらけ、シャンプーやブラッシングをしたり、人と常に一緒にいることに慣れさせる訓練をしているうちに私の病気も少しずつ良くなり引きこもりも改善してきました。
ポチの餌を買う為に出掛け、ポチと散歩する為に毎日外出する。以前では考えられないくらい家から外に出るようになりました。
次第に室内犬として躾るとポチとは朝から晩まで過ごすようになり、抱きしめることで心も体も癒やされてゆきました。
そんなポチは我が家に来た時点で14才、かなりの高齢で一緒に過ごせたのは数年でした。
亡くなったのは雪が降り積もっていた夜のこと。散歩から戻り、玄関の踏み台を登ったところでパタリと倒れました。
ポチを抱きかかえて居間に連れて行って、母と二人で浅くなってゆくポチの呼吸音を聞きながら何度も撫でました。
苦しそうなのに名前を呼ぶと尾を振り、目をこちらに向けて耳をピーンと立てるんです。
いつものように、いつもと同じように甘えたいんだって思うと泣きたくても泣けなくて…一瞬でも見逃すまいとポチを見つめていました。
最期の瞬間、私と母を見つめたまま大きく息を吐いてポチを亡くなりました。
その日たまたま出張に出掛けていた父は最期を見届けることができず、帰宅するなり生前と同じようにポチに話しかけていました。
涙混じりの震えた父の声と母の嗚咽が忘れられません。