★満席のバスと赤ん坊★
- 公開日
- 2015/02/10
- 更新日
- 2015/02/10
感動するいい話
東京にいた今から16年程前の12月も半ば過ぎたころの話です
私は体調を壊し、週二回、中野坂上の病院に通院していました
その日は今にも雪が降り出しそうな空で、とても寒い日でした
昼近くになって、病院の診察を終え
バス停からいつものようにバスに乗りました
バスは座る席はなく、私は前方の乗降口の反対側に立っていました
社内は暖房が効いていて、外の寒さを忘れるほどでした
まもなくバスは東京医科大学前に着き、そこでは多分
病院からの帰りでしょう、どっと多くの人が乗り
あっという間に満員になってしまいました
立ち並ぶ人の熱気と暖房とで
先ほどの心地よさは一度になくなってしまいました
バスが静かに走り出したとき、後方から赤ちゃんの
火のついたような泣き声が聞こえました
私には見えませんでしたが、ギュウギュウ詰めのバスと
人の熱気と暖房とで、小さな赤ちゃんにとっては苦しく
泣く以外方法がなかったのだと思えました
泣き叫ぶ赤ちゃんを乗せて、バスは新宿に向い走っていました
バスが次のバス停に着いた時、何人かが降り始めました
最後の人が降りる時、後方から、「待ってください 降ります」
と、若い女の人の声が聞こえました
その人は立っている人の間をかきわけるように前の方に進んできます
その時、私は、子どもの泣き声がだんだん近づいて来ることで
泣いた赤ちゃんを抱いているお母さんだな、とわかりました