小さいながらも会社を経営している私。
決算シーズンになると、2,3日平気で会社に泊まり込んだりしながら仕事をしています。
家に帰ってこない割には所得も低く、決して裕福とは言えない生活を家族にさせていている現状。
家にも帰らず、家族サービスもロクにしないことに対して妻や子供が不満を持っていることは、私も重々理解しているつもりでした。
そんな中、再び忙しいシーズンが到来。
過去最高の、5日間会社に泊まり込みという暴挙をとってしまった私。
連絡もマメにしておらず家族に心配をかけてしまったのですが、とにかく仕事に打ち込まなければと思い仕事に励んでいました。
そして5日ぶりに帰宅。
あらかじめ帰宅の時間を伝えておいたので、どこかで「食事作ってくれているかな」などと甘い考えを持っていました。
しかし・・・
玄関のドアを開けると、真っ暗な部屋が。
そして家の中に入り、リビングの電気をつけると、一枚の置き手紙が置いてありました。
「もう、出て行きます」
一瞬で顔が青ざめるような感覚に陥る私。
妻に電話をしても、圏外になっていて電話がつながりません。
どうしよう・・・
泣きそうになりながらとにかく妻と子供を探しにいこうと玄関の扉を開けると、そこには見慣れない「小さなダンボール」が置いてあったのでした。
玄関の外に、小さなダンボール。
私が帰ってくるときには、間違いなくこんなダンボールはありませんでした。
何だろうと思い、ダンボールを手に取ってみると、ずっしりとした重みが。
宛名も何もないものだったので、「爆発物か?」などと訳のわからないことを考えてしまっていました。
その時。
いきなり、「バン!!バンバン!!!!」と、火薬の爆発音のようなものが鳴り出します。
とっさに顔を伏せしゃがみだす私。
もう若干パニックのような状態で、何がなんだか全くわからなくなってしまっていました。
そうしたら・・・
「おかえり!」と、妻と子供の声が。
顔を上げて恐る恐る周りをみると、クラッカーを持った妻と子供が、庭の方から顔を覗かせて見ていました。
目が合うと、よほど驚いた顔を私がしていたのか、急に笑い出す始末。
「びっくりした?ちょっと驚かそうと思ってみたの」
あどけなく喋る妻に、「なんなんだよもう」と泣きそうになりながらぼやく私。
でも、その後、本当に泣くことになるのでした。
「仕事お疲れ様!お疲れ祝いに、プレゼント!」
「ダンボール開けてみて!」
何だなんだと思いながらダンボールを開けてみると・・・
そこには、欲しかった一眼レフのカメラとレンズが入っていたのでした。
「ずっと欲しがってたでしょ?」
「頑張ってやりくりしてたへそくり使って、買ってみたの」
「いつも仕事頑張ってくれてるから、そのお礼」
5分前には思いもよらなかった展開に、安堵と喜びが入り混じった私は、思わずボロボロと涙を流してしまいます。
なんて言っていいのかもわからず、泣きながら「ありがとな」と何度もお礼を言いました。
「でもちゃんと連絡しないと、本当にでてくからね」
「さっきの置き手紙見て、どう思った?」
「あんな風になりたくなかったら、ちゃんと連絡はしてね!」
「あとカメラ買ったんだから写真撮りにどこか連れてって!」
なんとも抜け目ない、豪快な妻。
でも優しさは、おそらく世界一です。
その週末、プレゼントでもらった一眼レフを持って、家族みんなでピクニックに行きました。
家族の仲良し写真を、これからたくさん撮っていきたいと思います。