学校日記

船長はただ黙ってうなずいていた

公開日
2014/10/14
更新日
2014/10/14

感動するいい話

津波で家ごと流された岩手県大船渡市の会社役員、金野健一郎さん(37)は、たんすにつかまり大船渡湾を漂っているところを小型船に助けられた。
船長の男性は、名前や住所を頑として名乗らなかった。金野さんは「船長の恩は一生忘れない。
落ち着いたら捜して、もう一度お礼を言いたい」と話している。

 地震が起きた11日、金野さんは公民館にいったん避難したが、スーツから着替えるために港から約300メートルのところにある自宅に引き返した。
2階の窓から外を見ると、「真っ黒な波が渦を巻いて迫ってきた」。

 みるみるうちに2階まで浸水。倒れて浮いていたたんすの背に必死にしがみついた。
そのまま天井まで約30センチのところまで浮き上がると、「バキバキ」と音をたてて家が回転し、突然、大きな衝撃音と共に屋根が吹き飛び視界が開けた。
たんすの上に乗ったまま沖に向かって流されていた。

 日が暮れ始めたころ、「多賀丸」という船名の小型船が通った。
「助けてくれー」と叫んだが、コンテナや民家、木とあらゆるものが海に漂っており、「無理だ」という船長の声が聞こえた。
「このまま沖に流されたら終わりだ」と絶望的になった。