小さなみかん
- 公開日
- 2014/08/30
- 更新日
- 2014/08/30
感動するいい話
小学校1〜2年生まで自分は感情の起伏の無い子供だったらしく、両親がとても心配してよく児童相談所や精神科みたいな所に連れていかれていた。
その時も面倒くさいとも楽しいとも思った事は一切無く、自閉症気味と診断されていたそう。
今親に聞くと、赤ん坊の時からめったな事では泣いたり笑ったりする事も無かったとか。
でもきちんと人の話は聞くし、知能も高かった事から親以外からは大人しい良い子だという風に受け入れられていて、上手く言い表せない自分の両親は心配しながらも、少し不気味に感じることもあったそうだった。
でも自分の爺さんは、そうやって不安がる両親に対して「こいつにはこいつのペースがあるんだ。放っておけ」と言うだけだった。
別段爺さんは自分を甘やかす事も無く、だからと言って無視したり虐待するでも無かったけれど、婆さんと両親は爺さんを冷たいと怒っていた。
ある日、爺さんが風邪をこじらせて肺炎になり入院した。
母親に連れられて見舞いに行ったとき、母親が花を花瓶に入れる為に病室を出て行った。
自分と爺さんが二人だけで病室にいて、何も話す事は無く物音一つしなく
て二人共動く事も無かった。
ふと自分の頬の側の空気が動き、見ると爺さんが青い小さなみかんを自分に差し出していた。
それをそのまま機能的に受け取って、爺さんも自分も何事も無かったように母が来るまでじっとしていた。
そのみかんをどうしたかは記憶が無い。
きっと家族の誰かが食べたんだろうとは思うけれど。