A君は乱暴者で、誰かが注意でもしようものならすぐに殴りかかっていく問題児。
中学校に入学すると、1日に数回は誰かとトラブルを起こしていましたが、体が小さく、泣いて暴れるA君を学級委員のB君が押さえ騒動を収めるのでした。
B君はサッカー部で成績も良く、A君はそんなB君の悪口を毎日触れ回っていました。
そのB君が父親の仕事の事情で1学期で転出することになりました。
クラスメイトはB君に内緒で音楽室でプレゼントの目覚まし時計用に歌を録音しました。
曲名は「そのままの君で」。 (クリックすると音楽が聞こえます!!)
伴奏が流れ、歌い始めると、泣き声が聞こえて、ピアノもみんなの歌声も止まってしまいました。
声の主に目をやると、なんとA君が人目もはばからず泣きじゃくってるのです。
学級のみんながもらい泣き。
何回も録り直した目覚まし時計は、涙でくしゃくしゃのA君が、拍手のなか手渡しました。
この話には、後日談が・・・・。
B君からは転出先で元気であると手紙が届きました。
そして、9月の中旬に、担任の元にB君の母親からも手紙が届きました。
それによると・・・・B君は、転居後しばらくは落ち込んで部屋に閉じこもる毎日だったそうです。
両親は単身赴任を選択すべきだったと後悔もしたそうです。
そんなある朝、いつまでも出てこない息子を起こすため母親が部屋に入ると、B君がベッドの上で時計を抱きしめて泣いていたそうです。
理由を聞いて、母親も感動し、お礼の手紙を書いたとのことでした。
あの日、誰もB君に時計の音が「クラスの合唱」だとは話していませんでした。
B君はしっかりした生徒で、目覚まし時計を、「目覚まし」としては使っていなかったのです。
久々に寝坊をして、はじめて鳴った時計から聞こえる歌声に、ただ驚き、そして懐かしさで涙が止まらなくなったのです。
B君は、あれから毎朝、時計の歌声で目覚め、元気に家を出たのでした。